絵具や筆以上に仕上がりに影響するのが紙。
最初は何も知らなかったので普通の画用紙を買ってきて使っていましたが、後から知って使ってみてその違いにびっくり!お値段にもビックリ!
大体水彩紙1枚で学童用のスケッチブックが1冊買えてしまうほど・・
紙の表面にはサイジング(にじみ止め)加工がしてあり、水彩特有のウェット イン ウェットやリフティングなどの技法がやりやすい様になってます。
又、紙の厚み・強度があってマスキングやスクラッチにも耐えられる様になっています。
〈細目〉〈中目〉〈荒目〉が有り、繊細で滑らかな画面を描きたい場合は細目をごつごつしたかすれた感じを出したい場合などは荒目を使います。一般的には中目が使いやすいようです。紙の厚さは1平方メートル辺りの重さ(g/㎡)で表しますが、画材店で売っている物は180g/㎡~300g/㎡ぐらいまでが普通です。
一般的には細目をHOT PRESS、中目をCOLD PRESS又はNOT、荒目をROUGHと表示しています。
水彩紙はメーカーに依ってそのキャラクターも様々ですが、代表的なものを挙げるとアルシュ、ファブリアーノ、ウォーターフォード、ワトソン、ラングトン、etc・・などがあります。
水彩紙にはブロック、スパイラルのブックタイプと1枚単位のバラ売り、大作用にはロール売りなどもあります。

スケッチブック

● ブロック/スパイラル(スプリング)

〈スパイラル〉・・片側をラセン状の針金で閉じてあるスケッチブック、鉛筆の線を生かした淡彩にはいいかも。
ウォッシュをたっぷりしたい時は剥がして水張りする。

〈ブロック〉・・・四方を糊付けしてあり水を多量に使った時、紙がゆがまない様になっている。描き終わったらペーパーナイフやカッターで剥がす。

● シート紙

シートのバラ売りもある。少しだけ試したい時はこっちの方が経済的。
画板に水張り又はマスキングテープで固定して描く。

※サイズなどはこちらの記事を参考にしてください。

水彩紙レビュー

これまで使った水彩紙のレビューです。
個人的な感想ですので・・・
画風、描法の違いなどで、人に依っては全く違う印象受けるかも知れません
ですから、参考程度にって事でお願いします。
又、文中に記載してる購入金額は記事作成時のものもあります。価格の変動やレート(為替)によって変化しますので御了承ください。

【Arches】
フランスの高級水彩紙。コットン100%。荒目、細目、極細とあります。
私が買ったのは重さ300g/㎡の12インチ×16インチ(31cm×41cm)の細目と14インチ×20インチ(36cm×51cm)の荒目。
細目といっても他のメーカーの中目より少し粗い感じ、
20枚綴りですが、このサイズ日本で購入すると小さい方で¥9,000-前後、大きい方は¥12,000-前後します。

アメリカの画材通販サイトCheep Joe's Art Stuffで小は$31.00、大は$40.00で買いました
レートが1$=100円なら日本円で\3,000-と¥4,000-です。この違いは何なのじゃ~
多少運賃は掛かりますがまとめて買えば断然お得!
さて描き味の方ですがプロがこぞって使うだけの事はあると思いました。
乾いた時に多少色が沈む傾向にあるので好き嫌いはあるでしょうが・・
とにかく紙が強靱です。引っ掻こうが洗おうがびくともしません
紙は弱冠黄味を帯びてますがウォッシュの重ね塗りもきれいに発色します
ブロック紙の糊付けも他社に比べしっかりしているので多量に水を使ってもたわみません
水彩画の色々な技法にオールマイティに対応出来る紙だと思います。

※追記:コールドプレス(細目)はブロックとシート紙を複数の画材サイトで購入しましたが、紙目やサイジングが何故か異なっていました。私はブロックの方が好みですが、できれば同じにして欲しいところです。
ラフ(荒目)ではそれほど違いは感じませんでした。

【Waterford】
英国製高級水彩紙。コットン100%。ナチュラルとホワイトがあります
日本の販売代理店はホルベイン。F6サイズ(31.8cm×41.0cm)の12枚綴りで¥3,900-(税別)
私はこれの300g中目を1番良く使います。
これといった癖もなく描きやすく、発色もきれいです。
目の粗さ、サイジング処理、紙の強度など全てにおいて申し分有りません
私の中で水彩紙の良し悪しを判断する時この紙が基準となります。
これまで使用した紙の中では、絵具の定着力に関してこの紙に勝るものはありません
先に施したウォッシュが定着してるので、重ね塗りが安心して出来ます。
逆に言うと後からの修正や色抜きはやりにくいと言えます。

※追記:ナチュラルは黄味がけっこうあります。渋めの画風に向いてる気がします。
     ホワイトは発色が綺麗に出ますが、乾きはナチュラルより早いです。
     一般的にアルシュよりグレードが低いイメージがある様な気がしますが
     全くそんな事はありません。
     欧米では20枚綴りのブロック紙(ナチュラルのみ)が標準です。
     ちなみに12"×16"で比較すると
     英国ではウォーターフォードが$35、アルシュが$49
     米国ではウォーターフォードが$47、アルシュが$31
     で販売されてました。関税等の問題があるので一概には言えませんが
     日本ほどの価格差はないですね。

Cézanne - Hahnemühle
ドイツ製高級水彩紙。ハーネミューレ社のセザンヌ水彩紙は100%コットンを使用したモールドメイド製法(半手漉き)で作られています。荒目(Rough Surface)、中目(Matt Surface)、細目(Hot Surface)があります。
販売代理店はオリオン。写真は中目のブロック紙。
6号なら300g/㎡の10枚綴り(荒目、中目、細目)で\4,800-(税別)
その他サイズはこちらを参照してください。
全ての紙目について共通して言えますのは描き心地が素晴らしいということです。色乗りも良く着彩でストレスを感じさせない紙です。
描き手が一つの作品を仕上げるモチベーションを保つ上で、その事は重要で嬉しいことだと再認識させられる水彩紙だと感じました。
ドーサが適切でウォッシュが紙の繊維に柔らかに浸透していき、絵具が定着した後は重色しても下塗りが動かないので安心して描きこんで行く事が出来ます。
紙の白色度はウォーターフォード・ホワイトやキャンソン・ヘリテージと同程度です。
絵具の定着に優れた紙の特徴ではありますが、乾燥後のリフトアウト(色抜き)はしにくい様です。
紙の表面強度に関しては、マスキング液は問題ありませんが、マスキングテープを剥がす時やナイフでのスクラッチは注意してやった方が良いと思います。
肌合いの心地良さは紙のデリケートさと相まっているのでしょう。
私は中目と荒目を普段使用しておりますが、セザンヌ紙の細目はとても描きやすく発色も良く新鮮な驚きでした。
また中目は他ブランドの荒目と中目の中間くらいの目肌でとても気に入りました。

【Fabriano Artistico】
イタリア製高級水彩紙。創業700年以上の歴史を誇る老舗メーカー。
アルティスティコのブロック紙は少し黄味を帯びた「トラディショナルホワイト」とナチュラルな白さを持った「エキストラホワイト」があり、どちらも重さは300g/㎡で私が買ったサイズは12インチ×18インチ(30.5cm×45.5cm)コットン100%のコールドプレスです。
20枚綴りで1冊$30でアメリカの画材通販サイトDick Blick Art Materialsで買いました。(※別途運賃が掛かります)
日本では1冊¥8,000~9,000-前後だと思います。
目の粗さはコールドプレスにしては比較的荒い方です。
「エキストラホワイト」はウォーターフォードのホワイトと同等の白さ具合。明るい絵を描きたい人はこちらがオススメ。
アルシュに比べると発色はいいですが絵具の定着が少し弱い気がします。
グレージングすると下に塗った絵具が動いて来ちゃう場合が・・・
まぁこの辺は好みなので何とも言えませんが、深味のあるグリーンなどは1度か2度で決めないと濁ってしまうかも。
コットン製の紙の中ではリフトがやりやすい方だと思います。

アルティスティコとは別に「クラシコ5」という紙がありますが、こちらはコットン50%、パルプ50%の混合で、純白に近い白さです。
厚みは210g/㎡でシート売りしかないようです。水張りしないと即ボッコボコ(笑
日本ではアルティスティコの事をクラシコファブリアーノと呼んでいてなんか紛らわしい

【Fabriano 5】
〈ファブリアーノ5〉クサカベ(代)。私がこれまで試した40種類の水彩紙の中でもっとも白い紙。以前クラシコ5という名の紙と名前が変わっただけ(というか代理店も変わった)という代理店の話だったが、白色度はこちらの方が白い。コットンの配合が50%でアルティスティコに比べると紙肌は柔らかでサイジングは弱め。滲みやボカシはきれいに出るが荒目の方はかなり荒い肌理となっている。マスキング液、テープ共OK。リフトは乾燥すると抜きにくくなる。ブロック紙は300g/㎡の20枚綴りで荒目と中目が有る。

【Fabriano Watercolour】
〈ファブリアーノ ウォーターカラー〉クサカベ(代)。無塩素漂白のパルプとコットン25%を配合した水彩紙。厚み300g/㎡、ハイホワイトの発色の良い紙。乾燥は早いので滲みやボカシのタイミングも早めが良さそう。サイジングは強く絵の具が紙の表面に留まる感じ。予め水刷毛で表面を馴染ませると描きやすくなる。マスキング液、テープ共OK。リフトは良く抜ける方。中目はブロックのみ、細目はパッドのみとなっている。

【Sennelier】
フランス製高級水彩紙。コットン100%。フランスへ旅行した時にパリの画材屋さんで買いました。
中目300g、20枚のブロックで30cm×30cmの正方形と26cm×36cmと
どちらも日本ではあまりなじみのないサイズです。
確か日本円でどちらも¥6,000-ぐらいでした。
アメリカのサイトでも同じぐらいの値段がしたと思います。
まぁこの時ユーロが高かったですからねー、今ならもうちょっと安いでしょ
アルシュの中目が粗いのに対してこちらは他のメーカーより細目よりです。
紙の地は白くとにかく発色がキレイ
絵具が乾いても自分の思ったとおりの色合いに仕上がる印象
イラスト系や花の絵を描く人には良いんじゃないでしょうか。

※追記:あちらで販売してる製品は殆どがインチサイズ(1インチ=25.4cm)
     で表記されており、長方形の方は14+1/8"×10+2/8"
     正方形が11+4/5"×11+4/5"です。
     セヌリエって日本にはもう輸入されてないんでしょうかね?
     時々画材店で見掛けますが・・
     現在はファブリアーノ社が製造してると聞いた事がありますが
     アルティスティコとは違う紙質ですね。

【The Langton】
英国ラウニー社が製造している水彩紙。パルプ100%。
販売代理店はクサカベ。中目F6サイズ12枚綴りで¥3,550-(税別)
下のプレステージが販売になるまでパルプ製だとは知らずに使っていました。
紙質は白く全てにおいて中庸でウォーターフォードと同様、非常に使いやすい紙です。
ウェットインウェット、バックラン、リフティングなどもきれいに出来ます。

【The Langton Prestige】
こちらは同じラングトンでもコットン100%
お値段はF6中目12枚綴りで¥4,950-(税別)ちょっとお高め目です。
同じ中目でもパルプ製と比べると目は少し荒い気がします。
いや見た目には一緒なんですが筆が引っ掛かる感じとでもいいましょうか・・
吸い込みは比較的早く、リフティングにも少し苦労しました。
ウォッシュが紙の繊維にゆっくりと染み込んでいくコットン紙ならではの心地良さが有ります。
ちょっと癖はありますが発色の良さはこちらに軍配が上がります。

※ 追記:荒目のシート紙を英国から購入して使用してみたところ、
     中目のブロック紙とはかなり使用感が異なりました。
     紙目とロットの違いはあるでしょうが、上記の引っ掛り感、吸い込 みの早い感じは無く非常に描きやすい紙でした。
     価格も1/4シート(F5相当)20枚で約 ¥1,650-ほどでした。(1ポンド=127円換算)

【Whatman】
英国製高級水彩紙。100%コットン。
数年前までウォーターフォードと同価格でホルベインから販売されていた古くから由緒ある水彩紙ですが残念ながら製造中止になりました。
私はその時5~6冊買い占め、大事に保管してるので今でも時々描きます。
地肌が白くて柔らかく、発色も良く滲みもキレイにでますが、強度は弱いのでマスキングは御法度!
ドーサが強く、最初のウォッシュは弾かれることもあり場合もあったり、放置しておくと風邪を引きやすいなど確かに扱いやすい紙ではなかったかも。その辺が仇となったのでしょうか?
復活の願いを込めてラインアップに入れておきます。

【Avalon】
日本・英国製、100%コットン
上のワットマンに替わりホルベインから発売されたアヴァロン水彩紙。
F6中目12枚綴りで¥4,200-(税別)
ワットマンの製紙技術を活かして英国の工場で作られているとの事。
紙質は柔らかく白いがマスキングは可能です
但しワットマンとは目は全く違います
紙の目はウォーターフォードに近く、色味と柔らかさはワットマン寄りといったところでしょうか。
発色も良くボカシ、リフティングも比較的容易に出来るので私にとっては非常に使いやすいと感じました。

【Strathmore Imperial】
米国製水彩紙。100%コットン。
代理店はホルベインでF6のブロックで\4,200-(税別)
表面強度が強いのでスクラッチ、洗い、マスキングなどを駆使した表現に向いています。
紙目は中目のみで、わりと不規則な感じのエンボスです。
地肌は白く発色もまあまあ、但し吸い込みが強く、もたもたしてると画面が乾いてしまうので注意が必要です。
ウォッシュが乾いた時に他のコットン紙と比べると色が淡くなる気がします。
この紙が大好きだと言ってる方もいますが、私自身は少し苦手。
ぼかしや垂らし込みを多用する場合はウォーターカラーメディウムなど乾燥を遅らせる画用液を併用した方がいいかも。

【Lanaquarelle】
フランス・ラナ社製、100%コットン。
紙質は柔らかく、地肌は最も白い部類。
私が購入したのは12"×16"、20枚綴りのブロック紙。
Dick Blick Art Materialsで1冊$32.5で購入
表紙ブルーがコールドプレスでピンクがラフですが、どちらも目は比較的荒い方だと思います。
ふわっとしていて他の紙にはない感触で発色は良く滲みもきれいに出ますが、乾いてしまうと拭き取りや修正はきびしい。マスキングはOK
個人的には暗い色調の中で濃淡をつけるのは難しい紙だと感じました。
滲みを多用した明るい画面向きかな?
以前はアポロ社から発売されていましたが現在は輸入されていません。

【Kilimanjaro】
アメリカの画材通販サイト、チープジョーアートスタッフのオリジナル水彩紙。
中目で300g、600gの黄味を帯びたナチュラルホワイトと白いオリジナルホワイトがあります。
私は300gのナチュラルと正方形のオリジナルホワイトを買ってみました。
ナチュラルはけっこう色味がありますが渋い色調で描きたい時はこれでも十分
ホワイトは発色が良く、どちらも描き心地はとても良いです!
コットン100%、31cm×41cmの20枚のブロック紙で$29.7ぐらい
品質が良く、コストパフォーマンスはかなり高いと感じました。

【Wirgman350】
日本製(オリオン社)。パルプ製
オリオン社の水彩紙、350g/㎡と厚めで表が中目、裏が細目と両面使えるという面白い紙です。
私が買ったのはスパイラルですがブロックも販売しています。
紙質は白く硬質なイメージ、発色も悪くはなくリフトも容易に出来ます。
両面使ってみてですが中目の方が目も独特で面白い仕上がりになります。
全体的にカチッとした絵肌に仕上がります。
350g/㎡あるので水張りしなくてもそこそこいけます。

上記のものは現在は表紙の色が替わり、F6サイズ15枚綴りで\3,400-(税別)となり、〈WIRGMAN350〉という名称になってます。
他に200g/㎡20枚のスパイラルと245g/㎡18枚のブロックが販売してます。

【Clester】
日本製ホルベイン。コットン・パルプ混合。
1番最初に買った水彩紙がコレ。F6サイズの210g/㎡、24枚綴りのブロック紙で定価¥1,800-也。
少し赤味がかったナチュラルホワイトの中目です。中目だがやや細目寄り
マスキング液は使えますが、粘着力の強いマスキングテープだと剥がれます。
今となっては舶来物の高級紙を色々試したのでそれらに比べれば勝る物は安いという以外何もないのですが、当時一般の画用紙からコレに替えた時の感動は忘れる事はできません。
透明水彩画は水彩紙に描いて始めてその良さを発揮出来るのだ・・と痛感した一品

【albireo】
日本製ホルベイン。パルプ100%。
F6サイズの218g/㎡、24枚綴りのブロック紙で定価¥1,500-(税別)
1枚あたり62.5円也!
かなり白い中目の水彩紙。一応中目だが私の印象では細目寄り
表面強度は有りマスキング液の仕様はOK。
メーカーの説明書きには「水彩絵具やカラーインクで塗りムラのない彩色を必要と する作品に効果を発揮」とあるが、私が塗るとかなりムラが出ます。どちらかと言うと塗りムラをわざと出したいときにコレを使うという感じでして、その辺は使う方がご自分で確かめられると良いでしょう。

【Lamplight】
日本製(ミューズ社)コットン100%
2013年6月発売。300g/㎡ 中目
暖かみのあるやや赤味がかった水彩紙。一応両面彩色対応とメーカーでは言ってます。
ブロック紙・スパイラル各サイズ、シートは4/6判(1091×788mm)とF50号サイズがあります。
ブロック紙は通常のサイズより縦横1cmほど大きめになってます。
F6サイズで定価\3,700-(税別)と輸入紙と変わらないですが、15枚綴りなので3枚ほど多いです。
サイジングはかなり強めです。最初のウォッシュは弾かれるので、水刷毛で馴染ませた方が良さそうです。
リフティングはコットン紙にしてはかなり抜ける方です。
紙質は柔らかく、表面はあまり強くありません。マスキングインクやテープは大丈夫ですが、スクラッチ等は気を付けてやった方がいいです。
発色は落ち着いた仕上がりになる印象です

【Watson】
日本製(ミューズ社)。混合
日本人にはポピュラーなワトソン紙。現在表紙のデザインは変わってるみたいです
F6スパイラルは239g/㎡15枚で\2,900-(税別)
F6ブロックは300g/㎡15枚で\3,100-(税別)
中目のみで黄味が強い紙です。
強度はあるので、マスキングはOK
発色はのっぺらな印象が強く、個人的にはあまり好きな紙ではありません
発色を押さえた作風にはいいかも知れません

【White Watson】
日本製(ミューズ社)
メーカーの説明書きにはナチュラル色の伝統的ワトソン紙を自然な白色度にしたとありますが、上のワトソン紙と比べると紙の目も全く異なるように感じます。
添加剤を用いず、自然水のみで白色度を出しているそう。
ざらつき感もなく絵具の発色も良いのですが、若干すべる感有り。
絵具の定着はあまり強くありません。なのでリフトは簡単に出来ます
白い紙の中では乾燥は緩やかな方なので、にじみやぼかしはやり易いと思います。
金額はナチュラルのワトソンと同じです。

【vifArt】
日本製マルマン社
以前の「コットマン」から「ヴィフアール」に名称が変わりましたが
中身に変更はないみたいです。
様々な厚みで荒目、中目、細目とそろってます。
ブロック、パッド、スパイラルとバリエーションがあります。
比較的どこの画材屋さんでも手に入る水彩紙です。
紙の強度はあまりありませんのでマスキング等は使用しない方がいいでしょう。
私は淡彩スケッチやエスキース用として使っています。

W&N社から新たに「コットマン水彩紙」が発売されましたが
こちらはマルマン社の旧コットマンとは別の物です。

【Moleskine】
販売イタリア/製造中国
「伝説のノートブック」と銘打って最近日本でも販売されている糸綴じ製本タイプのノートブック。
表紙はオイルクロスで覆われたハードカバーで角は丸くなってます。
大きい方がA4サイズ・60ページで「フォリオ水彩画用アルバム」、小さい方が13cm×21cm・72ページで「水彩画用ノートブック ラージ」
どちらもコットン100%、200g/㎡の中目
紙質は白く、発色はキレイですが、表面強度は余り強くなさそう。
吸込み、乾燥も早めなので手際良く描く必要有り。
糸綴じなので見開きでパノラマが描けます。
裏表紙にはチョットしたメモなどが入るポケットも付いてます。
元々はフランスの小さな製紙会社が作っていて数々の文豪やアーティストに愛用されてきたモノらしいですが、いつしか操業停止になり1998年にミラノの出版社がこれを甦らせたとの事。
表裏同じ目で両面描けるので野外で沢山スケッチするのに便利。

【White ibis】
日本製、ホルベイン 混合
「高性能かつコストパフォーマンスに優れた水彩紙。
コットンを高配合し、欧州の高級水彩紙に匹敵する高い発色と基本性能を持った日本製の高級水彩紙です。
適度な目の荒さとホワイト色の表面が特徴で、アーティストの様々な水彩技法にお応えします。」
・・と、ここまではメーカーの弁
で、実際使った感想としては
すごいですコレ!メーカーの弁そのまま受け取って大丈夫です。
発色、紙の強度、サイジングの処理、絵具の定着度などかなりの性能だと思います。
トータルの描き心地が良く、この価格でこの質を実現したのは驚き!
コストパフォーマンスはかなり高いと言えます。
紙の白さはウォーターフォードのホワイトと同程度。
ただし、リフトアウトは難しい
完全に乾いてからの修正はけっこうキビシイ感じなので、リフトを多用する方は避けた方が無難かも。
逆に重ね塗りは安心して行えます。
F6(410×318) Cold Pressed 300g/㎡ 410×318 15枚ブロックで¥3,000+税

【Canson Heritage】
フランス・キャンソン社製 コットン100% 販売代理店:マルマン
「円網機で抄造され、手漉き紙に匹敵する甘美な手触りの紙肌が生まれます」とのこと。
長さのあるコットン繊維を使い、低速度の抄紙機によって形成。繊維が全方向に分布されるので、濡れた状態でも紙の安定性が保たれ、それにより顔料の均一な散布が保証されるというのが、宣伝文句の一部。
紙肌は荒目(Rough)、細目(Cold Pressed)、極細(Hot Pressed)の3種類、目と呼び名はアルシュと同じですね。
そのすべてを試すことが出来ました。
紙の表側はいわゆるエンボス系の肌合いですが、裏側はそれに加え縦横の細かい繊維が流れているのが分かります。
つまり表裏の分かりやすい紙と言えるでしょうか。手触りが良く高級感あります
ウェットインウェットはすべての方向に緩やかに滲んでいきます。
極細はやはり滑らかすぎて、私には向かない感じですが発色は美しいです。
使うなら細目か荒目だと思いますが、アルシュと同じく細目は他のブランドの中目程度です。
白色度はウォーターフォードのホワイトくらい
お値段はアルシュと同じくらい
ラインアップは
シート:300g,640g 560×760mm
ロール:1560×4520mm
ブロック、パッド各サイズ
ブロック20枚, 300g/㎡ 310×410mm(F6相当)で¥9,700+税

【Moulin du Roy】
フランス・キャンソン社製 コットン100% 販売代理店:マルマン
こちらもキャンソン社製。「ムーラン・ドゥ・ロワ」と表示してる販売サイトもあるが、キャンソン社では「ムーラン・デュ・ロワ」となっている。まぁ、どちらでもOKなのでしょう。
ヘリテージと同じく円網抄造機で製造され、手漉き紙に近い肌合いがウリの水彩紙。
紙色はかなり白いですが、漂白剤は一切使用していませんとの事。
内部と表面に施したサイジング処理によってリフティングや洗い出しが比較的容易に可能。
実際私もやってみましたが、苦労なく抜くことができました。
荒目、細目、極細の3種類。で300g/㎡ と 640g/㎡があります
私が描いたのは荒目でしたが、びっくりするほど荒いです!(写真は細目のパッド)
表示はExtra Roughとか極荒目としなければいけないレベルだと思います。
発色はとてもキレイです!!
ラインアップは
シート: 56×76 cm
ロール: 1.30×9.15 m
パッド: 23 x 30.5 cm, 24 x 32 cm, 30 x 40 cm と 30.5 x 45.5 cm
ブロック20枚, 300g/㎡ 305×455mm(F6相当)で¥6,600+税

水彩紙比較表(PDFファイル)

水彩紙の白色度、乾燥速度、滲み具合、リフト、定着度、マスキング強度などを現在所有の紙を並べてテストしてみました。あくまで自分の基準を作るためのもので個人的主観です。エクセル作った表をPDFファイルにしてあるので興味のある方はダウンロードして下さい。

※(注)テスト後に発売になった水彩紙は掲載しておりません。

  1. 白色度・・・全紙ハガキ大にカットサンプルを作り、白色度、色味をチェックした。1番白いものを10、1番色味のあるものを1とし10段階に分けた。

  2. 強度(表面強度)/マスキング・・・マスキング液(シュミンケ)、マスキングテープ(住友3M)を施た上にウルトラマリンを塗り、十分乾燥させてからマスキングを剥がす。その上からアリザリンクリムソンでラインを引き紙面の毛羽立ちがないか試す。

  3. 乾燥速度・・・ウルトラマリンとバーントシェンナの混合色を全紙並べて一気に塗り、同条件で乾燥速度をみる。

  4. サイジング/リフト・・・上記のウルトラマリンとバーントシェンナの混合色を完全に乾燥させた後、油彩用の平筆に水を含ませ上下に5回往復させティッシュで拭き取る。さらにもう1度同じ事を繰りして比較。

  5. 発色/重色/定着度・・・左側にウインザーイエローを塗り、完全に乾燥させた後、右側からウインザーブルーを塗る。中央の部分が透けてグリーンになる部分をチェック!

  6. にじみ/グラデーション・・・にじみは紙を水で濡らし半乾きになったところへスカーレットレーキとバイオレットを流し込む。グラデーションはコバルトブルーを水平に引き、下に向かって水で伸ばす。さらに下方にオレンジを引き上方向に水で伸ばす。

テストした水彩紙

同一条件にてテスト

テスト中

う~ん、けっこう大変な作業になってしまいました。
リフト(拭き取り)や絵具の定着度はまぁまぁ分かりやすい結果が出ましたが
にじみに関してははっきり言って分からないと言うのが正直なところ
結局好みの問題でしょうか。
こんな比較をしたところで1枚絵を仕上げてみなければ本当の使い勝手は
わからないというのが結論です。
でも自分なりにある程度目安にはなったでしょうか。

テスト結果はこちら→→→watercolorpaper_test.pdf

良い画材が無けりゃ・・

絵が描けない訳じゃない。ましてや上手な絵が描けるわけでもない。
そんな事は百も承知・・・でもちょっとしたこだわり、ささいな喜び。どうせ描くならお気に入りのものに囲まれていたい。そのぐらいの贅沢は許されるはず・・・ここは私のオモチャ箱

僭越ではありますが・・

ここでは水彩画の道具について初心者の方が見ても分かる様に説明しているつもりですが、私の個人の価値感、使用感ゆえにエキスパートの方々が見れば眉をひそめる様な記述が多々あるやも知れません。なんらかのご指摘・ご指導が御座いましたらこちらのほうへ。

結局のところ・・

安かろうが高かろうが自分にあったものを見つけるのが1番なのは言うまでもありません。でもそこにたどり着くには色々試してみなけりゃ分かりませんからね。コレって決めつけるのもつまらないし、気分次第であれこれ触ってみるのも楽しいのです♪