幼い時から絵具遊びが好きだった。
パレットに並んだ色とりどりの絵具たち
それはまるで宝石箱の様、
ジャムの空き瓶に水を入れピチャピチャと筆に含ませる。
白い紙に色がさーっと染まっていくまさに「至福」の瞬間!
ここでは私が普段使っている専門家用透明水彩絵具を紹介。
そのほとんどが外国製でその色味を出す為、一切の妥協も許さない製品である。
それ故に知らないと怖い事も多い。
プロ用の絵具は薬品と同じなのである。なのに画材店ではそのような情報開示は全くと言っていいほどなされていない。私が使用する色に限ってではあるが、調べてみたので興味がある方はご覧下さい。メーカーのカラーチャートは現物の色味と異なる為実際に色を塗り、さらに画像を補正しました。左側は濃い色、右側は水で薄めた色で塗り分けてあります。

※注:基本的に絵具には顔料の毒性の有無にかかわらず、防腐剤や殺菌剤が含まれています。口に入れるのは論外、乳幼児やペットにふれる場合も必ず手を洗った方が良いでしょう。
アレルギーに過敏な方や皮膚の弱い方は特に注意が必要です。
長野県に高品質・安全性・低価格をモットーに独自の絵具を製造・販売しているメーカーがありますので気になる方はチェックしてみては→株式会社まっち

Cool Yellow

カドミウムレモン W&N(PY35)

Cadmium Lemon
寒色黄、やや不透明。硫化カドミウム+亜鉛。
通常のレモンイエローもあるがそちらの組成はニッケルチタン。
まあ顔料の安全性からすればニッケルチタンの方が安心。
植物の着色には便利な色。


オーレオリン W&N(PY40)

Aureolin
コバルトイエロー、透明。
オーレオリンは無機顔料で唯一の透明顔料だそう。ややカラシっぽい色をしているが、水で薄めると鮮やかな黄色になる。コバルトを含むので粒状化する傾向がある。


グリーンゴールド W&N (PY129)

Green Gold
イエローグリーンアゾメチン。堅牢な有機顔料である。
濃い色はオリーブ系だが薄めると透明な黄色になる。
最近お気に入りの絵具。単色では冴えない色だが、フタロ系のブルーと混ぜると自然なグリーンが出来る。


Warm Yellow

カドミウムイエロー W&N (PY35)

Cadmium Yellow
暖色黄、やや不透明。硫化カドミウム+セレン、医薬用外劇物。何かとってもこわ~い感じがするが、口に入れたりしなければ特に危険なことはない。ただ子供やペットの手に触れるところに置いてはいけないでしょう。色味の良さと着色力は魅力です。


トランスパレント・イエロー W&N (PY150)
/トランスルーセント・イエロー Schmincke(PY150)

Translucent yellow /Transparent Yellow
暖色やや褐色がかった黄、透明。主成分アゾ・ニッケルイエロー
色延びがよく、非常に発色の良い黄色です。最近はガンボージに替わり、こちらを使っています。
木々の緑や褐色はこれをベースに混色してます。W&N、シュミンケ共ほぼ同じ色味


ニューガンボージ W&N (PY153)

New Gamboge
暖色やや褐色がかった黄、透明。主成分ニッケルジオキサジン
本物は東南アジアの「ガンボージ」って木の樹液が原料だが色褪せが激しいのでW&Nでは耐久性のある顔料に変更
日本の風景に良く合う黄色。


ローシェンナ W&N (PY42,PR101)

Raw Sienna
イエローオーカーによく似た色で透明。
黄土に比べやや黒っぽい。主成分は水和酸化鉄で天然土顔料、着色力弱し。シェンナはイタリア トスカーナ地方の都市の名前。顔料が土なので価格も安い。安心して使える。アースカラーだけど黄色として使用


カドミウムオレンジ W&N (PY35,PR108)

Cadmium Orange
カドミウムイエローの赤味をおびたもの、組成はカドミウムイエローとカドミウムレッドを合わせたものだが、実際に2色を混合したものよりも色鮮やかである。毒性があり価格も高い
濃い緑を作る時、青系と混色すると味わいのある色が作れる。


トランスルーセント・オレンジ Schmincke (PO71)

Translucent Orange
シュミンケの透明なピロールオレンジ。
他のオレンジとは異なった色味です。水で薄く溶いても色延びが良く、単色でも混色でも巾広く使える。日本の夕焼け空や紅葉にとてもマッチしていると思う。青系との混合で深みのあるグリーンが作れる。


Warm Red

カドミウムレッド W&N (PR108)

Cadmium Red
朱赤。バーミリオンは硫化水銀だがこれは硫化カドミウムとセレンの混合物であり非常に毒性が強い。ちなみに人間の致死量は3.5gである。皮膚からも吸収するので使わないにこしたことはないのだがこの色味は他の赤ではなかなか出ない気がする。やや不透明


ウインザーレッド W&N (PR254)

Winsor Red
主成分ピロール。鮮明で透明な赤
カドミウムレッドよりやや青味を帯びている。Wikipediaに依ると「ジケトピロロピロール」・・1980年代初頭に開発された新しい、対称発色団を持つヘテロ環状顔料・・とある。なんだかさっぱりですが。。多分安全


ブラウンマダー W&N (PR206)

Brown Madder
主成分キナクリドン。茶色がかった透明な赤
不透明なライトレッドの代わりに使用。


Cool Red

パーマネントアリザリンクリムソン W&N (PR206)

Alizarin Crimson
鮮明な赤、透明色。染料系の絵具なので染み付きやすく取れにくい。おまけに色褪せが生じる。しかし他では代用出来ない色味が有り単独でも混色にも出番は多い。最近では主成分をキナクリドンで代用した堅牢なものが出来たのでそちらを使用。


パーマネントローズ W&N (PV19)

Permanent Rose
ローズピンク、透明。主成分キナクリドン。
退色しやすいローズマダーに替えて開発された絵具。
素晴らしい色味である。赤と白を混ぜて作ったピンクなど足元にも及ばない。


キナクリドンマゼンタ W&N (PR122)

Quinacridone Magenta
印刷インクのマゼンダに近い。やや紫がかった鮮明なピンク。キナクリドンは堅牢な合成有機顔料で耐久性のないレーキ系の天然色素に代わり、近年赤系の顔料として多く使われている。フタロ系のブルーとの混色で鮮明な紫が作れる。


オペラ Holbein (PR122,BV10)

Opera
蛍光色、鮮やかなピンク。耐光性はどのメーカーの資料を見ても一番低いので、単独で大きな面積に使う事はしていません。しかし、上塗りで赤味を足したい時など絶大な威力を発揮します。


Purple

パーマネントマゼンタ Holbein (PV19)

Permanent Mazenta
エンジ色、主成分キナクリドン。これを赤の仲間にするか紫とするかは難しいところだが、私は赤紫という事でこちらへ区分。もう少し青味が入るとミネラルバイオレット(PV15)という色がある。私はグリーン系に混色してトーンをコントロールことが多い。


ウインザーバイオレット W&N (PV23)

Winsor Violet
主成分ジオキサジン。
基本的にパープルは赤系と青系を混ぜて使う。
何故ならその方が味が出るからに他ならない。
この鮮明な紫は混色のベースに使うことが多い。


ウルトラマリンバイオレット Schmincke (PV15,PB29)

Ultramarine Violet
シュミンケの青みがかった透明な紫。同名のW&N製のものはもっと赤みがかっている。ミネラルバイオレットとウルトラマリンの混合でほぼ同じ色が作れるが、影の色のベースとしてとても便利な色なので使用している。


コバルトバイオレットライト Holbein (PV14)

Cobalt Violet Light
主成分リン酸コバルト・砒素化合物、毒性有り。
淡いすみれ色で着色力は弱い
セルリアンブルーやコバルトターコイズライトとの混色でラベンダー系の色を作る事が出来る。ちなみにラベンダーとして販売されてる色はホワイトが混ざっているので不透明感は避けられない


Blue

セルリアンブルー W&N (PB35)

Cerulean Blue
少し緑味を帯びた淡いブルー。主成分 錫酸コバルト、毒性有り。着色力弱くやや不透明。高価である。TINTや学生用絵具は別な顔料に白を混ぜてこの色に似せている。空の描写にはもちろん、オレンジと混ぜると独特なグリーンも作れる。コバルトは重金属なので紙の上で分離したり沈殿化する。・・まぁそれも味か?


コバルトブルー W&N (PB28)

Cobalt Blue
透明な澄んだ青。
水酸化アルミとリン酸コバルトの焼成に依って出来る。毒性有り、高価。1802年にテナールって人が発明したらしい。私にとって空と水辺の表現には欠かせない絵具。堅牢度、耐光性共最高レベル。


フレンチウルトラマリン W&N (PB29)

French Ultramarine
群青、やや赤味のある透明な暖色系青。
大昔は天然のラピスラズリを使用し非常に高価だったが1828年にフランスで人工的な合成が発明された。単独でも良い色味だが他の色と混ぜてトーンを落とす時に威力を発揮する。最も頻繁に使う色。主成分はシリカ、アルミナ、ソーダ、硫黄で毒性は無し。


ウインザーブルーグリーンシェード W&N (PB15)

Winsor Blue-Green Shade
やや緑味を帯びた非常に色味が強い寒色系ブルー。組成はフタロシニアン。暖色系イエローとの混色で濁りのない暖かいグリーンが作れる。
他の青が無機顔料なのに対しこれは優秀な有機顔料である。透明度も高く、耐光性も良。緑の中にコレをWetで流込むと画面に躍動感が出る。


フタロブルーレッド Rembrandt (PB15)

Phthalo Blue-Red
レンブラントのフタロシニアンブルー。
色味はウルトラマリン(赤味がある)とウインザーブルー(緑味がある)の中間ぐらい。「青ってこれじゃん!やっと見つけた」って感じ(まー、上の2色をまぜりゃいいんだけどネ・・)


ヘリオターコイズ Schmincke (PB16)

Helio Turquoise
シュミンケの金属を含まないフタロシニアンブルー。PB15よりも緑がかっている。同じ顔料でホルベインからマリンブルーの名称で販売されているが、そちらはもう少し鮮やか。


デルフトブルー Schmincke (PB60)

Delft Blue
組成はインダンスレン、又はインダスロンブルー。プルシャンブルーよりもやや紫がかっていて着色力の強いブルー。安全で耐久性にも優れている。深みのある美しい青で、着色にムラが出ない。同じ顔料でW&Nからはインダスレンブルー、ホルベインからはロイヤルブルーが販売されているが色味は各社異なる。


Green

オリーブグリーン Holbein (PY17,PG36)

Olive Green
その名の通りオリーブの緑。
メーカーによって色はバラバラ
イエロー又はグリーンゴールドとペインズグレー、ニュートラルチントなどの混色で簡単に作れる色なのでパレットには出していない。


サップグリーン Holbein (PY17,PG8,PG36)

Sap Green
直訳すると樹液を搾り取った緑。本来はクロウメモドキって木の果実を顔料にしていたようだが耐光性が乏しいので最近ではアゾ系イエローとフタログリーンから作られる事が多い様である。着色力が強く透明。これもメーカーによって色は様々。最近はグリーンゴールドとフタロブルーでほぼ同じ色が作れるので殆ど使用しなくなった。


フーカーズグリーン W&N (PG36,PY110)

Hooker's Green
応用範囲の広い緑。
緑はコレ1色で十分という人もいる。透明で着色力が強く、耐久性がある。キナクリドンと塩素化銅フタロシニアンから精製される。この色自体は人工的な色味なので混色は必至。


ビリジアン W&N、Rembrandt (PG18)

Viridian
透明な青緑。小学生の時、緑といえばコレが入っていた。もっともアレは本物に似せたものだが・・。組成は水和重クロム酸カリウム。耐久性があり毒性もなく安心して使える。乾燥が早く、しかも水に溶けにくいので扱いやすい絵具ではない。コバルトブルーとの混色で深みのある水の色が出せる。透明色。チューブを使う場合、レンブラントのものが乾燥してもボロボロにならないので良いです!


コバルトターコイズ W&N (PB36)

Cobalt Turquoise
着色力のあるやや不透明な青緑、毒性有り。カラーインデックスではブルーに属するが、個人的には緑に分類。セルリアンブルーとビリジアンで同じ様な色になります。


コバルトターコイズライト W&N (PG50)

Cobalt Turquoise Light
明るいコバルトグリーン、やや不透明で毒性有り。
海外の画家のパレットを覗くとこの色が頻繁に登場する。風土的なものもあると思うが、画面のワンポイントとしてスパイス的な使い方をしている人が多い様である。私はセルリアンブルーやパープルと混色して空に使います


Earths

イエローオーカー W&N (PY43)

Yellow Ochre
黄土色。
天然黄土から成り、やや不透明。組成が土なので最も古くから使われている色。価格も安い。ちょっとありふれてるけど日本の風景にはかかせない色。


バーントシェンナ W&N (PR101)

Burnt Sienna
赤茶色。ローシェンナを焼成して出来た色、透明。
グリーン系との混色で色々な深い緑が作れて便利な色。ウルトラマリンとの混合で美しいグレーが出来る。同じ赤茶色でライトレッドがあるが、そちらは不透明。


バーントアンバー W&N、Holbein (PBr7)

Burnt Umber
焦げ茶、透明。組成はローアンバーを焼製したもの。
着色力が強く、乾燥が早い。粒子が粗く、紙の上で粒状化する
※W&Nのチューブは固まるとボロボロになるので、チューブはホルベインを使用。


ローアンバー Rowney (PBr7)

Raw Umber
やや緑がかった茶。
天然土顔料で主成分は酸化鉄、酸化マンガン。
産地によって色味が変わるのでメーカーによって色は全然違う。
粒子が粗くマンガンを含むので乾燥も早い。粒状化する。


セピア W&N (PBk6,PR101)

Sepia
セピアとは「イカ墨」の意。
カーボンブラックと合成土性顔料で出来ている。単体では乾くとのっぺらとしてあまり魅力的な色ではないが、グリーンとの混色で深みを出すには便利な色。


Grey

ペインズグレー1 W&N (PB15,PV19,PBk6)

Payne's Grey W&N
青みのあるグレー。
下のRowney製と比べれば一目瞭然だがメーカーが違うと同じ名前の絵具でもこれだけ色味に差がある。透明水彩では一般的に黒は生気のない色だから使うなと云われる。黒の代わりにコレを使う画家は多い。・・・てな訳で私も(笑)


ペインズグレー2 Rowney (PBk7,PB29)

Payne's Grey Rowney
主成分はカーボンブラック+ウルトラマリン。カーボンって石油を燃やし不完全燃焼させた「すす」を使うらしい。とあるサイトに使いすぎるとすすっぽくなるって書いてあった。なるほどね!


ニュートラルチント W&N (PB15,PV19,PBk6)

Neutral Tint
やや赤みのあるグレー。
組成はペインズグレーと同じです。赤味が多いか青味が多いかの違い。
グレーや黒を画面に置く時は3原色や補色混合で作ったグレーの方が活き活きすると思うので、既製のグレーは混色でトーンを落とす時に使う様にしている。


ペリレーングリーン W&N (PBk31)

Perylene Green
有機顔料ペリレン系、透明。名称はグリーンとなっているが私はグリーンがかったグレーとして使用している。混色のベースとして便利な色です。ホルベインではシャドーグリーンという名で販売している。


良い画材が無けりゃ・・

絵が描けない訳じゃない。ましてや上手な絵が描けるわけでもない。
そんな事は百も承知・・・でもちょっとしたこだわり、ささいな喜び。どうせ描くならお気に入りのものに囲まれていたい。そのぐらいの贅沢は許されるはず・・・ここは私のオモチャ箱

僭越ではありますが・・

ここでは水彩画の道具について初心者の方が見ても分かる様に説明しているつもりですが、私の個人の価値感、使用感ゆえにエキスパートの方々が見れば眉をひそめる様な記述が多々あるやも知れません。なんらかのご指摘・ご指導が御座いましたらこちらのほうへ。

結局のところ・・

安かろうが高かろうが自分にあったものを見つけるのが1番なのは言うまでもありません。でもそこにたどり着くには色々試してみなけりゃ分かりませんからね。コレって決めつけるのもつまらないし、気分次第であれこれ触ってみるのも楽しいのです♪